よくある一戸建ての隣人・近隣トラブルとは?事例や予防方法を紹介
住まいづくり
一戸建ての購入を検討し始めると「近隣トラブルに巻き込まれないかな……」とか「隣人ともめたら、どう対処すればいいのだろう?」と不安になりますよね。
実際、住宅を購入した多くの方が隣人・近隣トラブルに直面しています。しかし、そのようなトラブルは、予防策や対処方法を知っておくことで回避したり大ごとになるのを防いだりできます。
本稿では、よくある一戸建ての隣人・近隣トラブルの事例や予防策、対処方法を紹介します。あなたも、本稿を参考にして、隣人トラブルのない理想の新居ライフを手に入れてみませんか。
よくある一戸建ての隣人・近隣トラブル事例
近隣トラブルは誰でも不意に巻き込まれる可能性があり、しかも深刻な事態になるケースが珍しくありません。ある日突然、被害者にも加害者にもなり得るのです。
では、実際のところどんなトラブルが多いのでしょうか。よくある近隣トラブルを、6つご紹介しましょう。
騒音トラブル
もっともトラブルになりやすいのは、騒音でしょう。騒音が人間関係を狂わせた例は枚挙にいとまがなく、こじれて傷害等の事件にまで発展したケースも珍しくありません。
たとえば、こんな「音」がトラブルの火種になっています。
- 子どもの声や走る音
- 車のエンジン音やアイドリング音
- 宴会やカラオケの音
- 一般生活音
- エアコン室外機やヒートポンプ給湯器の運転音
- ペット(とくに犬)の鳴き声
騒音は、不眠やイライラなどのさまざまな障害を引き起こします。人によっては頭痛や吐き気、動悸(どうき)なども起こすそうです。
そんなこともあって、細心の注意が必要なトラブルと言えるでしょう。
ペットのトラブル
ペットも近隣トラブルの火種になりやすいので、注意が必要です。中でもとくに多いのが、騒音でも紹介した「犬の鳴き声」によるトラブルです。
猫の場合は、他人の敷地内への侵入やフン尿、ニオイがトラブルになります。他にも、以下のことがトラブルに発展するきっかけになっています。
- 電信柱等でのフン尿
- 毛や羽の飛散
- 人に危害を加えた
- ペットへの虐待が疑われる
もしもあなたがペットを飼う立場になったら、世の中には動物が苦手な人もいますので、じゅうぶん配慮して飼育する必要があります。
たとえば都市部では、猫はなるべく室内で飼い、犬も朝晩は室内に入れるようにするとトラブルになるリスクを下げられるでしょう。
ゴミ捨てトラブル
ゴミの捨て方からトラブルになるケースもあります。例をあげてみましょう。
- 近隣の家がゴミ屋敷化して、ニオイや害虫に悩まされる
- ゴミ出しのルールを守らない人がいて、カラスに荒らされる
- 道路にたばこの吸い殻やペットのフンを放置される
ゴミの問題で他にも困っている人がいるようなら、自治会で問題として取り上げてもらえる場合があります。回覧板で間接的に注意喚起してもらえないか、相談してみるとよいでしょう。
ゴミ出しの問題に関しては、自治体の生活課や環境課に相談すると、対応してくれるケースもあります。
ニオイのトラブル
ペットのフン尿やゴミ屋敷から発生する悪臭など、ニオイのトラブルも注意が必要です。
庭で開催するBBQは、ニオイや煙が近隣の迷惑となる可能性があります。開催している本人たちは楽しくても、周りの住人は不快かもしれません。洗濯物にニオイが移るケースもあります。
路上駐車トラブル
路上駐車も、問題の火種になります。たとえば、こんなトラブルに発展します。
- 向かいの家の路上駐車で、こちらが車庫入れしづらい
- ちょっと路上駐車していたら、通報された
- 複数軒で負担する私道に路上駐車していたら、損害賠償を請求された
路上駐車の問題は、お互いに違法駐車をしないことが第一です。相手の路上駐車に困ったときは、まずは早めに困っていることを伝え、やめてもらうようにお願いしてみましょう。
境界線(筆界線)トラブル
何代かに渡って受け継がれているような古い敷地は、境界(筆界)が曖昧になっている場合があります。
登記書類の中に測量図がない場合や、長い年月のあいだにお隣が越境して家を建てたり木を植えたりしてしまっているケースでは、あとでトラブルになる可能性があります。
境界でもめそうになったときは「筆界特定制度」を利用するとよいでしょう。これは法務局がおこなっている制度で、境界を調査・特定してもらえます。
参考:法務局 筆界特定制度
紛争に発展した場合は、土地家屋調査士会のADRを利用するとよいでしょう。ADRでは、裁判所の訴訟に代わって、当事者どうしの合意にもとづく解決を図れます (詳しくは後述)。
境界と建物のあいだの距離が問題になることもあります。民法では「建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない (234条)」としています。
しかし、境界ギリギリに家や物置を建ててしまい、トラブルになるケースが少なくありません。ただし、敷地が狭い等の理由で、境界間際に建てる慣習がある地域はこの限りではありません (236条)。
いずれにしても、境界問題は解決まで長引きやすいので、トラブルになりそうな土地を買わないことが大切です。もしも買ってしまうと、新築や売買、建て替えなどが滞るかもしれません。
境界トラブルを避けたい方には、境界が明確で、境界と建物のあいだに距離を取れる広めの土地をおすすめします。
一戸建ての隣人・近隣トラブルの予防方法
さて、よくある隣人トラブルを6つご紹介しました。このような実情を知っておくことで、トラブルに巻き込まれたり、他人に迷惑をかけたりするリスクを下げられます。
その他にも、トラブルを予防するのに効果的な行為があります。とくに有効なものを、3つご紹介しておきましょう。
購入前に可能な限りチェックする
近隣トラブルは、深刻な問題です。持ち家の場合は簡単に引っ越しできませんので、トラブルに巻き込まれたときに逃げづらいのです。
ですから、購入前に可能な限り現地へ出向き、トラブルの火種がないかチェックすることをおすすめします。たとえば、こんなことを確認しておくとよいでしょう。
- イライラするような音がしていないか
- おかしなニオイや悪臭を感じないか
- 隣家が、迷惑になるようなペットの飼い方をしていないか
- 隣家が空き家の場合は、管理不行き届きになっていないか
- 境界が、境界標や登記資料(地積測量図)で明示されているか
- 給湯器やエアコンの室外機が、境界間際に設置されていないか
- 隣家の建造物や庭木が、こちらの敷地に越境していないか
- 隣家は良識のありそうな人か
- 隣家の窓や換気扇の排気口の位置
- 路上駐車や改造車が停まっていないか
購入前に、時間や曜日を変えて現地へ出向くことも大切です。なぜなら、こんな土地もあるからです。
- 土日は静かなのに、平日は近隣の工場や学校がにぎやか
- 夜になると、近くの公園にたむろする集団がいる
時間や曜日を変えて現地へ出向けば、上述のようなトラブルを未然に防げるでしょう。
近隣住民とのコミュニケーションを大切にする
住民どうしのコミュニケーションは、トラブル回避に重要な役割を果たしています。理由を説明しましょう。
近年、近隣トラブルが増えている原因としてよくあがるものは、以下のとおりです。
- 常識的なマナーの欠如
- 人間関係自体の希薄化
- 地域コミュニティの消滅
- 現代人の過敏化や不寛容
- 集住や近接居住
コミュニケーションは、人間関係の希薄化を解消してくれます。住民どうしの交流は、コミュニティの代替にもなるでしょう。
コミュニケーションの中で相手に「マナーに疎いかも」とか「神経質だな」と感じたなら、先回りして予防することでトラブルを回避できるかもしれません。
また、単純接触効果(何度も見たり聞いたりすることで、その対象に対する親近感や好感度が高まる現象)によって、お互い寛容になれます。こんな経験はないでしょうか。
- よく知らない人には、不信感を感じてしまう
- 何度も会っているうちに、相手に好感を持った
ちなみに、単純接触効果は負の側面もあります。最初にネガティブな印象を持たれた場合は逆効果で、接触するほど好感度が下がるのです。
ですから、量質な接触の回数を増やすことが大切です。引っ越してきたときにちゃんと挨拶に行き、日常も顔をあわせたら笑顔で挨拶するとよいでしょう。
住民どうしの交流は、近隣トラブルの防止につながるだけではありません。防犯や防災、子どもの見守りの面でも役に建ちます。
広めの敷地に、隣家との距離をあけて家を建てる
広めの敷地に隣家との距離をあけて家を建てれば、近隣トラブルを回避しやすくなります。他人の迷惑行為に悩んだり、こちらが迷惑をかけたりする可能性を下げられるのです。
近隣トラブルは、集住や近接居住が一因になっているケースが少なくありません。たとえば、騒音トラブルやニオイのトラブルは、広い敷地より狭い敷地のほうが問題になりやすいでしょう。
広い敷地のメリットをご紹介します。
- こちらの生活音やお隣の生活音が伝わりにくい
- こちらの生活臭やお隣の生活臭が伝わりにくい
- エアコンや給湯器の室外機をお隣から離して設置できる
- ペットと一緒に暮らすための家を建てやすい
- しっかりと広い駐車場を取れる
- 日照や通風を確保しやすい
しっかり境界を確認してから土地を購入して、境界線から離して家を建てれば、境界トラブルも防げます。
もし、これから土地探しを始められるのであれば、ぜひ広めの土地の購入をご検討ください。近隣トラブルの有効なリスクヘッジになりますよ。
一戸建ての隣人・近隣トラブルに遭ったときの対処方法
最後に、万が一トラブルに遭ってしまったときの対処方法をご紹介します。
早めに当事者どうしで話しあい、解決に努める
近隣トラブルの当事者になってしまったら、できるだけ素早く消火することが大切です。火種は小さいほうが消しやすいですので、すぐに当事者どうしが顔をあわせて話をしましょう。
人の行動には「一貫性」と呼ばれる傾向があり、自分で決めたことや口にしたことは守ろうとします。その意味でも、当事者どうしが話をして合意を得ることが重要なのです。
話しあいで大事なことは、感情的にならないことと、相手のペースにはまらないことです。これからも続くご近所付き合いのために、禍根を残さないことが大切です。
ですから、まだ火種が小さい(感情的になっていない)うちに消火するのが効果的なのです。
自治会や警察、自治体の役所・役場に相談する
近隣トラブルが感情トラブルに発展すると、当事者だけでは解決できなくなることが多いでしょう。そんなときは、第三者の力を借りるほうがよい場合もあります。
では、どんな第三者が力を貸してくれるのでしょうか。いくつか例をご紹介しましょう。
自治会
まず、最初に考えられるのが自治会です。回覧物で間接的に注意喚起してもらったり仲裁に入ってもらったりすることで、状況が改善する可能性があります。
複数の住民が困っている場合は、自治会の問題と捉え、主体的に動いてくれるかもしれません。
自治体の役所や役場
自治体の役所や役場へ相談に行くと、助言してもらえます。当事者どうしや自治会で解決できないときは、頼ってみるとよいでしょう。
たとえば、生活環境保全条例に違反するような騒音やゴミ出しの問題は、市の生活課や環境課が調査のうえ、改善の勧告などをおこなってくれる可能性があります。
警察
警察も、事案によっては対応してくれる場合があります。たとえば、犯罪行為や悪質な嫌がらせを受けている場合などは相談してみるとよいでしょう。
なお、事故や事件は「110番」ですが、緊急性のない相談は警察署の専用窓口へ出向くか、警察相談専用電話「#9110」に連絡してください。
ここでご紹介した自治会・自治体は、基本的に当事者間で解決して欲しいというスタンスでしょう。警察も、原則的に民事に介入しません。
このような団体や機関に相談しても解決できそうにないときは、専門家や紛争処理機関を頼ることになります。
必要に応じて、専門家や紛争解決機関に相談する
とりなす技術のある専門家や専門機関は、当事者どうしがいがみあっていても、冷静に話しあわせることができます。近隣トラブルがこじれたときに、頼りになるでしょう。
主な専門家や近隣紛争解決機関をご紹介しましょう。
弁護士
弁護士というと「裁判 (訴訟)」のイメージがありますが、裁判意外にも、法的な観点からさまざまなフォローを受けられます。
例をあげてみましょう。
- 相手方との話しあいの際に同席してもらい、法的な解決へ導いてもらう
- 内容証明郵便などで、迷惑行為をやめるように警告してもらう
内容証明郵便を使った警告は、迷惑行為の抑止力になり得るでしょう。万が一、裁判になったときは、迷惑行為の差し止めを請求していたことの証拠にもなります。
ただし、弁護士に関与してもらう場合は、高額な費用がかかります。
民事調停
民事調停とは、裁判所で当事者どうしが話しあい、合意によって解決を図る手続のことです。当事者どうしが譲りあい、道理や実情にあった解決へと導くことを目的としています。
参考:民事調停法 第1条
民事調停は、訴訟のようにどちらが正しいかを決める場ではありません。調停委員会が個別にヒアリングを実施しながら、調停案(お互いがどこまで譲れるか)を探ってゆきます。
民事調停は手続が簡単で、手数料も訴訟より安く設定されています。ただし、当事者どうしが合意に達しなかった場合は解決せず、他の法的手段で解決を図ることになります。
ADR(裁判外紛争解決手続き)
ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、裁判をせずに法的なトラブルを解決する方法の総称です。上述の民事調停も、ADRのひとつです。
ADRには「あっせん・調停・仲裁」の3つの種類があります。
あっせん | 対立する当事者のあいだに第三者(あっせん人)が入り、話しあいを促して紛争を和解に導こうとする制度。 |
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調停 | あっせんと同様に話しあいで解決しようとする制度。必要に応じて調停案が作成され、当事者はその賛否を表明する。 |
仲裁 | 裁判所において裁判を受ける権利を放棄して、仲裁人に「仲裁判断」を下してもらう制度。 |
ADRは、司法や行政、あるいは認定を受けた民間のADR機関(弁護士会や司法書士会、土地家屋調査士会など)が実施します。
ADRは訴訟に比べて手続が簡単で、経済的です。短期間で決着するところも長所と言えます。
一方、仲裁以外の判断は強制執行力がありません。相手方は、ADRの席に着くことを拒否することもできます。
訴訟
民事調停やADR(あっせん、調停)での解決が難しい場合は、訴訟を起こすことになります。訴訟では裁判所が双方の言い分を聞き、紛争解決のために法的な視点から判決を下します。
訴訟のメリットは、相手がかたくなな場合でも最終決着を図れることでしょう。一方、デメリットは時間や労力、高額の費用がかかりやすいところです。100%勝てる保証もありません。
できれば、民間調停やADR、訴訟を利用することなくトラブルを収束させたいですよね。面倒なことにならないように、家や土地を買う段階で、可能な限りリスクを排除しておきましょう。
【まとめ】敷地が広ければ一戸建ての隣人・近隣トラブルを防ぎやすい
持ち家は多くの人から憧れられていますが、近隣トラブルに巻き込まれてしまったときが大変です。調停人を入れても解決できないことがあり、賃貸住宅のように気軽に転居もできません。
しかし、トラブルの火種がないか購入前に確認しておくと、ある程度はリスクを回避できます。入居後は、日頃からご近所と良好な人間関係を築いておくことで、トラブルの発生を軽減させられます。
また、大きめの敷地でゆったりと家を建てることで、多くの近隣トラブルを遠ざけられます。これから土地探しをされるのであれば、トラブルが起こりにくそうな広めの土地を選ぶとよいでしょう。