建築面積とは?どこまで算入?延床面積や敷地面積との違いも解説
住まいづくり
「建築面積」をご存じでしょうか?住宅の新築で何度も見聞きする用語ですが、意味や計算方法が難解で「建築面積って?結局、どこまで含まれるの?」と悩む方が少なくありません。
建築面積について理解を深めておくと、間取りを考える際に役立ちます。設計者なみに詳細に知る必要はありませんが、建築主さまも、概要だけでも知っておかれるとよいでしょう。
本稿では、建築面積の意味や不算入のルールについて、できるだけ分かりやすく解説したいと思います。敷地を有効活用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
建築面積とは?わかりやすく解説
さっそく、建築面積の定義や利用方法をご紹介したいと思います。法律関連のトピックですので、用語が多く非常に難解ですが、できるだけ分かりやすい解説を目指します。
なお、本稿では住宅の「建築面積」について解説します。工場や倉庫は少しルールが変わりますので、ご了承ください。
建築面積の定義(条文)
建築面積の意味は「建築基準法施行令 第2条1項2号」に記載されています。少し長いのですが、原文をそのまま引用しておきましょう (太字は筆者によるもの)。
建築物(地階で地盤面上一メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもの(以下この号において「軒等」という。)で当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たもの(建築物の建蔽率の算定の基礎となる建築面積を算定する場合に限り、工場又は倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積卸しその他これに類する業務のために設ける軒等でその端と敷地境界線との間の敷地の部分に有効な空地が確保されていることその他の理由により安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定める軒等(以下この号において「特例軒等」という。)のうち当該中心線から突き出た距離が水平距離一メートル以上五メートル未満のものであるものを除く。)がある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線(建築物の建蔽率の算定の基礎となる建築面積を算定する場合に限り、特例軒等のうち当該中心線から水平距離五メートル以上突き出たものにあつては、その端から水平距離五メートル以内で当該特例軒等の構造に応じて国土交通大臣が定める距離後退した線))で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、当該建築物又はその部分の端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。
非常に読みにくいですよね ―― 。( )部分を省略すると「建築物の外壁、または外壁に代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」と読み取れます。
水平投影面積とは、真上から見て測定した面積のことです。家が少しだけ浮いていると仮定して、「太陽が真上に来たときにできる家の影の面積」と考えると分かりやすいでしょうか。
ただし、以下の理由で、実際には影の面積より建築面積のほうが少し小さくなります。
- 外壁またはこれに代わる柱の「中心線」で囲まれた部分で算出
- 傾斜やデコボコを考慮しない
- 屋根の軒やひさしも、一定の条件を満たす部分は除外する
つまり、外壁(またはこれに代わる柱)のツラではなく、中心線で計算するということです。傾斜やデコボコで引き延ばされた面積も、考慮しません。
外壁等からはみ出している軒やひさしなども、ある条件に当てはまると建築面積に算入しなくてよくなります (詳しくは後述)。
ちなみに「建築物」については、建築基準法で以下のように定義されています。
- 土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するもの
- これに附属する門もしくは塀
屋根と、それを支える柱(もしくは外壁)のない部分は、建築面積に含まれないと考えられます。ですから、たとえば屋根のない中庭やテラス、ウッドデッキは建築面積に算入されません。
建ぺい率との関係
さて、建築面積はどんなふうに利用されているのでしょうか?
建築面積は、建ぺい率で制限されています。建ぺい率の上限を超える建築面積の建物は、建築できません。
参考:建築基準法第53条
建ぺい率とは「建築物の建築面積の敷地面積に対する割合」のことです。上述の条文で、地域(用途地域)ごとに割合を決めています。
建ぺい率の上限は、主に以下の理由で設けられています。
- 敷地内に一定の空地を確保するため
- 火災時の延焼防止や避難経路の確保のため
- 日照や通風、町並みの美観維持のため
上述のような理由から、住環境を重視する地域ほど建ぺい率の上限が低く設定されています。敷地が広く建ぺい率が低い地域は、ゆったりとした町並みになるでしょう。
住環境や建築できる建物の規模に関わってきますので、新築される際は、必ずその地域の建ぺい率を確認しておきましょう。
軒やひさし、ポーチは入る?建築面積の不算入ルールについて
さて、建築面積は「建築物の外壁、または外壁に代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」と説明しました。
ということは、外壁から突き出している軒やひさし、ポーチは建築面積に算入しなくてよいということでしょうか?―― 残念ながら、一定の条件に当てはまると算入しなければなりません。
建築面積に不算入、または緩和される部分
以下のものについては、外壁または外壁に代わる柱で囲われた部分の外にあっても、一部を不算入または緩和できる規定があります。
- 軒等
- 地階
- 開放的な構造のもの
順番に、詳しくご説明しましょう。
▼軒等
建築基準法施行令には、軒等(軒・ひさし・はね出し縁・その他これらに類するもの)の取り扱い方法が記載されています。
軒等が、外壁またはこれに代わる柱の中心線から水平距離で「1m」以上突き出ている場合は、その先端から水平距離で「1m」後退した線が建築面積の算定基準になります。
たとえば、ひさし部分が外壁の中心線から1.2m突き出している場合はどうなるでしょうか。このケースでは、外壁の中心線から20cmまで、ひさしを建築面積に算入しなければなりません。
ちなみに、この規定は「はね出しバルコニー」や「出窓」にも適用されます。出窓は、以下の条件にも合致している必要があります。
- 下端の床面からの高さが、30cm以上であること
- 周囲の外壁等から水平距離50cm以上突き出ていないこと
- 見付け面積の2分の1以上が窓であること
参考:建設省住指発第115号
判断が難しいのは、外壁から突き出した「ひさしのあるポーチ」でしょう。これは、以下のように解釈できます。
柱や壁がない場合 | ひさしの先端から水平距離で「1m」後退した線より建物側が含まれる |
---|---|
柱や壁がある場合 | 柱や壁の中心線で囲まれた部分と、ひさしの先端から水平距離で「1m」後退した線より建物側の両方が含まれる |
▼地階
地階(地盤面から高さ1m以下の部分に天上があるもの)も建築面積から除外できます。
なお、地階とは「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のもの」と定義されています。
このような地階の上に地階より小さい面積の建物が建っている場合、地階は除外して上の建物のみ建築面積の対象とすればよい、ということです。
▼開放的な構造のもの
国土交通大臣が「高い開放性を有する」と認めて指定する構造の建築物は、緩和措置を受けられます。たとえば、カーポートがこれに該当します。
「高い開放性を有する」と認められる条件は、以下のとおりです。
- 外壁のない部分が連続して4m以上あること
- 柱の間隔が2m以上であること
- 天井の高さが2.1以上であること
- 1階建てであること(地階を除く)
参考:建設省告示第1437号
上述の条件に当てはまる建築物は、水平投影面積のうち端から水平距離で「1m」以内の部分を建築面積から除外できます。
建築面積の上限の計算方法
建築面積の上限は、以下の式で計算できます。
建築面積 = 敷地面積 × 建ぺい率 ÷ 100
この式をご覧いただくと分かるように、敷地面積とその地域の建ぺい率が分かれば、建築面積を算出できます。土地を買う際の目安になりますので、覚えておくと便利ですよ。
敷地面積・延床面積とは?建築面積との違い
建築面積とあわせて覚えておきたい面積が、ふたつあります。ご紹介しておきましょう。
敷地面積とは
建築対象となる土地の水平投影面積を「敷地面積」と言います。こちらも、条文をそのまま引用しておきましょう。
敷地の水平投影面積による。ただし、建築基準法(以下「法」という。)第四十二条第二項、第三項又は第五項の規定によつて道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地は、算入しない。
上述の条文には「ただし書き」があり、不算入になる条件が記載されています。これは、いわゆる「セットバック」が該当します。
たとえば、建築基準法第42条2項では、幅4m未満の道路に面する土地に家を建てる場合、原則として道路の中心線から2mまで道路と見なすと規定しています。
道路と見なされた部分は、自分の土地であっても、家や門塀などを建築できません (このルールを「セットバック」と呼ぶ)。敷地面積からも除外されます。
参考:建築基準法第42条
なお「敷地」は、建築基準法施行令で「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」と定義されています。
つまり、ひとつの土地に2棟建てたいときは、建築確認(行政の建築許可審査)の申請上、敷地を分ける必要があるということです。そのようなご計画の方は、覚えておくとよいでしょう。
ちなみに、敷地面積と登記簿に記載されている「地積 (土地面積)」は、必ずしも一致しません。たとえば、登記簿の地積にはセットバック部分も土地面積として加算されています。
延床面積(延べ面積)とは
建築物の各階の床面積の合計を「延床面積 (延べ面積)」と言います。ただし、以下のものは一定の要件を満たすと一部を床面積から除外できます。
- 自動車車庫・自転車置場(延床面積の1/5まで)
- 防災のために設ける備蓄倉庫(延床面積の1/50まで)
- 蓄電池を設ける部分(延床面積の1/50まで)
- 自家発電設備を設ける部分(延床面積の1/100まで)
- 貯水槽を設ける部分(延床面積の1/100まで)
- 宅配ボックスを設ける部分(延床面積の1/100まで)
以下の床面積も、不算入、あるいは減算されます (ただし、行政庁ごとに見解や条件が異なる場合がありますので、ご注意ください)。
- 吹き抜けの上階部分(床がないから)
- 地階(住宅の用途に供する床面積の合計の3分の1まで)
- 出窓(不算入の条件は「建築面積」と同様)
- 小屋裏物置等(ロフトや床下収納など)
参考:建築基準法 第52条3項
また、屋外とみなされる以下の部分は、一定の条件をクリアすることで床面積から除外できます。
ピロティ | じゅうぶんに外気に開放され、かつ屋内的用途に用いられない部分。 |
---|---|
バルコニー・ベランダ | 外壁からの出幅が「2m」まで。2m超えの部分や、相当の部分が壁等で囲まれている場合は算入。 |
ポーチ | 主に通行専用の用途である限りは、原則として床面積に算入しない。 |
ちなみに、屋外部分とみなされるには以下の条件をクリアする必要があります。
- その周囲の相当部分が、壁のような風雨を防げる構造になっていないこと
- 屋内的用途(居住・執務・作業・集会・娯楽・保管・格納・物品の陳列など)を目的としないこと
たとえば、広いポーチやピロティを作業場やアウトドアリビングに使用していることが明らかな場合は、床面積に算入されます。
参考:建設省住指発第115号
【まとめ】建築面積を理解して、理想の間取りをつくろう
建築面積は意味や不算入のルールが難解ですが、大筋を理解しておくと、あなたが家づくりをされる際に役立ちます。敷地を有効活用するための一助となるでしょう。
あなたも、本稿で得たヒントを活かして、マイホームの設計に取り組んでみてはいかがでしょうか。考え尽くした間取りで建てた家は、ひときわ愛着が湧きますよ。
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